在宅で腹水穿刺ってできるの?【後半】
こんにちは、ホームケアクリニック麻生の井尻学見です。
前回は、腹水穿刺のリスクについてお話ししました。今回は、そのリスクがある中でも在宅で腹水穿刺をしている方について、お話します。
在宅で腹水穿刺している方って?
腹水が溜まる原因はさまざまありますが、当院で腹水穿刺をされる方はがん患者さんが多いです。腹水の原因が「がん以外」の場合は、その病気に対する治療を優先することが必要です。
腹水穿刺をすることでお腹の張りや呼吸が楽になるなど苦しい症状はおさまりますが、体にとって良いことだけではありません。しかし、予後が限られたがん患者さんの場合、一時的でも症状を緩和させるために、リスクがあっても腹水穿刺をおこなうことがあります。
あるがん末期の患者さんの話です。
その方は、腹水がたまり、お腹が苦しく吐き気もあり、ご飯もほとんど食べられなくなってしまっていました。リスクがあることを伝え、それでも苦痛症状をなくしたいという本人とご家族の希望で、腹水穿刺をおこないました。数日後、その方は息を引き取りましたが、腹水を抜いたあとは、とてもらくそうに過ごしておられました。ご家族からは「最期をらくに、穏やかに過ごすことができた」と感謝の言葉をいただきました。
腹水を抜くと、腹水が原因でおこっていた症状は緩和され、らくになります。
しかし、腹水には体に必要な栄養が含まれており、穿刺にはリスクも多くあります。そのため、腹水を抜かなくても医療用麻薬でコントロールする等、別の手段で対応し、本人がつらくなければ良いかなと思っています。
当院での腹水穿刺
がん末期の患者さんの緩和ケアとして、腹水を抜く方は多くいらっしゃいます。「最期は穏やかに過ごしたい」という方、入院して定期的に腹水を抜いている方の「少しでも自宅で長く過ごしたい」という思いに可能な限り寄り添い、全力でサポートしていきたいと考えています。
腹水は、たまると本当に苦しいです。
「今」つらい方に「3日後に抜きましょう」は、非常につらいと思います。
当院では、つらくなったら「はやく対応してあげたい」ため、本当に苦しい場合は往診して腹水穿刺をしています。(当院は24時間体制で往診をおこなっています)ちなみに、往診車には「腹水穿刺セット」を常備しています。
また、週1回以上抜かないとつらいという方もいらっしゃいます。
腹水を抜く場合「診察→準備→処置→終了」まで1時間〜1時間半ほどかかります。頻回に腹水を抜く必要のある方にとって、毎回針を刺して腹水を抜くのは非常に負担が大きくかかります。そのため、腹水を定期的に抜ける管をつけたままの状態にし、訪問看護師さんに定期的に腹水を抜いてもらうこともあります。
「腹水を抜いているから退院できない」ではありません。
患者さんが最期まで穏やかにご自宅で過ごせるよう最大限のサポートを全力でおこなっていきます。ホームケアクリニック麻生の井尻学見でした。