在宅療養中の熱中症予防|「暮らし」を診る訪問診療だから気づけること
こんにちは、ホームケアクリニック麻生 院長の井尻学見です。
札幌でも30℃を超える真夏日が増え、「北海道だから涼しい」という時代ではなくなりました。
先日も訪問診療で患者さんのお宅へ伺うと、玄関を開けた瞬間、部屋には熱気がこもっていました。ご本人は長袖・長ズボン姿。エアコンも止まっていました。
「先生、私は寒いから。」
そう穏やかに笑って話してくださいました。
また別の患者さんでは、扇風機はあるものの「風に当たるのが嫌い」と使われず、温度も湿度の高い室内で過ごされていました。
高齢になると、暑さやのどの渇きを感じにくくなることがあります。また、認知機能の変化によって、室温や季節の変化に気づきにくくなることも少なくありません。
もし診察室だけで診ていたら、このような生活環境には気づくことはできません。訪問診療では、ご自宅へ伺うからこそ、その方の暮らし全体を知ることができます。だから私たちは、病気だけではなく、「暮らし」を診ることを大切にしています。
熱中症は「家の中」で起こります
熱中症というと、炎天下で起こるイメージを持つ方が多いかもしれません。
しかし、高齢者の熱中症の多くは、自宅で発症しています。
在宅療養中の方では、
- 暑さを感じにくくなる
- のどの渇きを自覚しにくい
- トイレを気にして水分を控える
- 病気やお薬の影響で脱水になりやすい
など、いくつもの要因が重なります。
また、一人暮らしの方や日中を一人で過ごす時間が長い方では、体調の変化に周囲が気づきにくいこともあります。夏になると、「少し熱があるから夏風邪かな」「食欲がないけれど暑さのせいかな」と様子を見てしまうことがあります。
実際には、脱水や熱中症が隠れていることも少なくありません。
「家にいるから安心」ではなく、「家だからこそ注意が必要」です。
訪問診療だから見える「住まい」のリスク
訪問診療では、ご自宅へ伺うことで診察室では分からない生活環境まで確認できます。
例えば、
- エアコンは設置されているけれど使われていない
- 温度計がなく、体感だけで室温を判断している
- 飲み物が手の届く場所に置かれていない
- 日当たりの良い部屋や2階で長時間過ごしている
このような環境は、熱中症のリスクを高める原因になります。
また、認知機能が低下している方では、ご家族やヘルパーさんが朝に準備した目玉焼きが、そのまま夕方まで食卓に残っていることがあります。
夏場は食中毒にも注意が必要です。
古くなった食事を食べて下痢や嘔吐を起こすと、脱水が進み、熱中症をさらに悪化させてしまうことがあります。私たちは、こうした住環境や生活習慣も含めて、その方らしい生活を続けられるよう支援しています。
今日からできる熱中症予防
熱中症は、日頃の少しの工夫で予防できることが少なくありません。
エアコン・扇風機を我慢しない
室温は体感ではなく、温度計を参考にしましょう。
「電気代がもったいない」「まだ大丈夫」と我慢せず、エアコンや扇風機を適切に活用することが大切です。
風が苦手な方は、風向きを壁や天井に向けたり、直接体に当たらないように調整するだけでも快適に過ごせることがあります。
水分はこまめに
一度にたくさん飲むよりも、コップ一杯程度を何回かに分けて飲む方が体への負担が少なくなります。
※心不全や腎臓病などで水分制限がある方は、ご自身の判断で増やさず、主治医へご相談ください。
食事もしっかり
暑さで食欲が落ちると、水分だけでなく塩分やたんぱく質、エネルギーも不足します。
冷たい麺類だけで済ませるのではなく、たんぱく質を意識して取り入れてみましょう。
例えば、
- そうめんに卵やねぎを添える
- 冷ややっこに納豆をのせる
- 豆腐や魚を一品加える
- 冷しゃぶなど食べやすい肉料理を選ぶ
ちょっとした工夫でも、栄養バランスが整いやすくなります。
体を冷やす工夫
暑いときは、
- 首
- 脇の下
- 足の付け根
などを冷たいタオルや保冷剤で冷やすと、体温上昇を抑える効果があります。
「いつもと違う」は熱中症のサインかもしれません
熱中症は、突然倒れるだけではありません。
- 食欲がない
- 元気がない
- 強いだるさがある
- めまい
- 頭痛
- 吐き気
- 尿量が少ない
このような症状も、脱水や熱中症の始まりであることがあります。
在宅療養中の方では、「何となく元気がない」という小さな変化から始まることも少なくありません。
ご家族や介護に関わる方が「いつもと違う」と感じたら、早めにご相談ください。
暮らしを支えることも、私たちの医療です
訪問診療では、病気だけを診るのではなく、その方が安心して暮らし続けられる環境を一緒につくることも、大切な役割だと考えています。
ホームケアクリニック麻生の理念は、
「人とつながり、人と生きる。」
患者さん、ご家族、訪問看護師さん、ケアマネジャーさん、ヘルパーさん、薬剤師さん。
地域には多くの人が関わり、一人の暮らしを支えています。私たちは医療だけで地域を支えているのではありません。地域の皆さまや、介護・福祉に関わる方々、そして地域のお店など、多くの人とのつながりに支えられながら在宅医療を続けています。
私たちもその輪の一員として、病気だけではなく、暮らしそのものを支える医療をこれからも続けていきたいと思っています。暑い夏を安心して過ごせるよう、気になることがありましたら、どうぞお気軽にご相談ください。
ホームケアクリニック麻生の井尻 学見でした。
