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「歯はもういい」ではなく、最後まで食べる|訪問歯科の意義

[2026.09.06]

こんにちは、ホームケアクリニック麻生の院長、井尻学見です。
訪問診療では、終末期の患者さんから「歯はもういいです」と言われることがあります。

命に関わる病気と向き合う中で、お口のことは後回しになりがちです。しかし、日々患者さんに寄り添う看護師たちは、お口の小さなトラブルが生活に与える大きな影響を何度も見てきました。

私たちが訪問歯科を大切にしている理由も、そこにあります。

 

「食べられる」は、家族と過ごす時間につながる

終末期では、飲み込む力が弱くなる方もいます。

それでも、噛んで味を楽しむことや、「これが食べたい」という願いを叶えられることは、その人らしい時間につながります。

入れ歯が合えば、もう一度家族と食卓を囲めるかもしれない。
口の痛みが取れれば、笑って会話ができるかもしれない。

私たちが支えたいのは、栄養だけではありません。患者さんとご家族が過ごす、かけがえのない一日です。

 

すぐ診られることが、患者さんを救う

ある日、診療中に患者さんの歯ぐきから出血が止まらないことがありました。
その場で歯科医師へ連絡し、すぐに訪問。応急処置を行いましたが出血は続き、さらに口腔内を保護する装置を作製して対応しました。

医科だけでは難しい処置も、歯科が同じチームにいるからこそ迅速に動けます。

訪問診療では「後日受診してください」が難しい場面が少なくありません。その日に対応できることは、患者さんの安心にもつながっています。

 

口腔ケアは、感染症予防でもある

お口をきれいに保つことは、見た目のためだけではありません。
白血病など免疫力が低下した患者さんでは、口腔内の感染が全身状態の悪化につながることがあります。誤嚥性肺炎の予防にも、口腔衛生は重要です。

実際に歯科が継続して介入した患者さんでは、「病気を治す」ことはできなくても、感染のリスクを減らし、悪化を遅らせるための支えになれたと感じています。

在宅医療では、お口も全身の一部です。

 

本当の医科歯科連携は、情報を共有できること

当院では、医師と歯科医師が日常的に患者さんの状態を共有しています。
例えば、抗がん剤や骨粗しょう症の薬など、口腔内に副作用が出やすい薬を安全に使えるか。病状を踏まえ、どこまで治療を行うか。

診療情報提供書だけでは分からない背景まで、お互いに相談しながら診療できることが大きな強みです。

一方で、今後さらに良くしたい課題もあります。それは、訪問看護との情報共有です。
歯科で得られた口腔内の情報が訪問看護へ、訪問看護で気づいた変化が歯科へ届くことで、より早い気づきと支援につながるはずです。

 

最後まで、その人らしく

訪問歯科は、「歯を治す」ためだけの医療ではありません。
最後まで食べること、話すこと、笑うこと。そして家族と過ごす時間を支える医療です。

医科・歯科・訪問看護が一つのチームとして連携しながら、その人らしい毎日を一日でも長く支えていきたいと考えています。

ホームケアクリニック麻生の井尻学見でした。

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