在宅での緩和ケアの大切さ~手当て編~
こんにちは、ホームケアクリニック麻生の院長、井尻学見です。
今日は、在宅での緩和ケアについてお話ししたいと思います。
多くの方が「緩和ケア」という言葉を聞くと、すぐに「がんの末期治療」をイメージされる方が多いかもしれません。しかし、緩和ケアはそれだけではありません。
「人の肌に触れる」ことがもたらす緩和的な効果
私は「人の肌に触れることは、すごく緩和的な価値を持つ」と思っています。
古代の医療では、手のひらを患部に当てる「手当て」を用いてきました。患者さんが痛みや不安を抱えているとき、手を握ったり、肩をトントンと軽くたたいたりすることで、少しでも安心感を与えることができます。また、暖かい手のひらで辛いところに手を当て、その手のひらから伝わる感覚は、言葉では表現できないほどの癒しを与えてくれます。
痛みで苦しい時は、自分ひとりになると苦しさに意識が集中してしまいます。
私が小さいころ、お腹が痛い時に母がお腹をなでてくれました。痛みがなくなるわけではないのですが、すごく安心して、少しラクになったことを覚えています。
こうした触れ合いは、身体的なリラックス効果だけではなく、精神的な安定にもつながります。痛みや不安を感じている患者さんにとって、人とのつながりは心の支えになるのです。
緩和ケアにおける訪問リハビリの重要性
当院では訪問リハビリテーションもおこなっています。
筋力維持や転倒予防として訪問リハビリを始めることが多いのですが、がんが進んで歩けなくなった方にはマッサージをしたり、さすってあげたり、体の向きを変えてあげたり、身体を曲げ伸ばしします。
医師は、痛みをやわらげる処方や病状説明はできますが、1時間かけて患者さんの身体をさすってあげることは難しいのが現状です。その点に対応できるのが当院のリハビリスタッフです。
リハビリをしている時間は、苦しいところに手をあてて痛みや苦しみに共感する時間です。それは、苦しみから一時でも離れられる時間にもなっているのではないかと思います。また、ずっと看病している家族が休める1時間を作ることができるかとも思っています。
当院では、患者さん一人ひとりが「その人らしく生きる」ことができるよう、身体的なケアだけではなく、心のケア、ご家族のケアも大切にしています。緩和ケア「手当て」についてお話しました。次回は、緩和ケアでの「食事」についてお話します。ホームケアクリニック麻生の井尻学見でした。