小さな命との向き合い方から考える、最期まで大切にするということ
こんにちは、ホームケアクリニック麻生の院長、井尻学見です。
当院では、毎朝のカンファレンスでスタッフと短い時間の共有をしています。
診療の情報共有だけではなく、時には院長である私自身の日常の出来事を話すこともあります。スタッフから「先生の日常の話を聞くのが楽しみです」と言ってもらったことがきっかけで、家族との出来事や、最近感じたことを話すようになりました。
今回は、昨年の夏から一緒に過ごしてきた、ある小さな命のお話です。
夏に出会ったクワガタとの時間
昨年の夏、子どもと一緒に捕まえたクワガタがいました。
最初は8匹いたクワガタたち。
子どもと一緒に毎日のように様子を見ながら、土を替えたり、餌を替えたり、霧吹きをしたり。元気に過ごしてくれるように、できることを考えながら世話を続けました。
冬を越え、幼虫も3匹生まれました。
そのうち2匹は無事に成虫になりましたが、残念ながら1匹は途中で亡くなってしまいました。子どもと一緒に庭に埋め、手を合わせました。
小さな命ではありますが、一緒に過ごした時間があり、家族の一員のような存在になっていたのだと思います。
最期の時間をどう過ごすか
現在残っているクワガタの1匹も、少しずつ弱ってきています。
ダニがついてしまったため、身体から取り除いたり、土を替えたりしながら、できる限りのことをしてきました。しかし、少しずつ力がなくなっていく姿を見ると、「何とか元気になってほしい」と願う気持ちと、「自然の中で最後の時間を過ごさせてあげたい」という気持ちの間で迷いました。
子どもとも相談し、最後は元いた自然へ返すことにしました。
きっと、自然界では厳しい時間になるかもしれません。
それでも、最後の時間を住み慣れた場所で過ごしてほしい。
そんな思いで森へ返しました。
その時、ふと在宅医療で出会ってきた患者さんたちのことを思い出しました。
「できるだけ自宅で過ごしたい」
「住み慣れた場所で最後まで暮らしたい」
そう願う患者さんの気持ちと、どこか重なるものがありました。
私たちが大切にしていること
人も、動物も、過ごしてきた場所があります。
そこには思い出があり、安心できる環境があります。
もちろん、医療として安全を考えることは大切です。
しかし、それだけではなく、その人やその存在にとって何が幸せなのかを考えることも大切だと思っています。
在宅医療では、患者さん一人ひとりの「こうしたい」という思いに向き合います。病院という医療の場ではなく、自分らしく過ごしてきた家で、家族や大切な人と過ごす時間。その時間をどう支えるかを考えることが、私たちの役割です。
クワガタを自然に返した日のことを思い出すと、今でも子どもと話した時間が心に残っています。
最後までできることを考え、寄り添うこと。それは、大きなことだけではなく、日々の小さな出来事の中にもあるのだと思います。
患者さんやご家族が大切にしている時間を守るために。これからも、一つひとつの出会いを大切にしながら、在宅医療に向き合っていきたいと思います。
ホームケアクリニック麻生の井尻学見でした。
