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最期まで自分らしく:タバコを愛する肺がん患者さん

[2024.07.13]

私たちのクリニックでは、ご自宅で最期まで過ごす方々を医療面からサポートしています。その過程は本当に様々で、いろんな方の人生にふれさせていただいています。

ある肺がん患者さん
ある日、私たちのクリニックに一人の肺がんの患者さんが紹介されました。がんが全身に転移しており治療が難しくなり、病状も予後数か月と病院の主治医から伝えられていました。息をするのも苦しく、常時酸素を使用している状態です。
病状が厳しいため、入院の継続も考えられましたが、この方はタバコが大好きで、どうしてもタバコを吸って余生を過ごしたいという強い希望を持っており、無理を押して退院してきました。病院では喫煙が厳しく、大好きなタバコを自由に吸うことができないからです。

タバコは肺がんの原因であり、酸素に火を近づけるのも非常に危険です。また、呼吸が苦しい状態でタバコを吸うのは医学的には勧められません。ですが、なるべく希望に沿ってあげたいと考え、自宅療養を引き受けさせていただきました。

ご自宅に戻り、苦しい中でも酸素を外して一服し、「やっぱり、これが好きなんだよね」とにっこり笑っておっしゃった顔はとても生き生きしていました。ご本人にとって、この時間は非常に貴重なものだったのだと思います。訪問するごとに体調は徐々に悪化していきましたが、最期までタバコを楽しんでおられました。亡くなった顔は穏やかで、ご家族も「棺にもタバコ入れてあげないとね」とおっしゃっていました。

この患者さんの生き方を尊重し、ご自身が望む形で最期を迎えられて、率直に良かったと感じています。家族からも、ありがたいことに感謝のお言葉をいただきました。患者さん一人ひとりの希望や思いに耳を傾け、「ご自身の人生は、その方のもの」という考えを改めて大切にしていきたいと思った経験でした。

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