訪問診療クリニックの看護師【前半】
こんにちは、ホームケアクリニック麻生の井尻学見です。
これまで当院を支えてくれているスタッフについて、職種別に紹介してきました。今回は、診療をおこなう上で重要な看護師についてお話します。
これまでの職種別記事はこちら
訪問診療クリニックと訪問看護ステーションの看護師の違い
在宅医療にかかわる看護師は、当院のような訪問診療クリニックの看護師と訪問看護ステーションの看護師、施設の看護師、ディサービスなどで働く看護師などさまざまです。同じ看護師であっても、役割はそれぞれ異なっています。ここでは訪問診療クリニックの看護師と訪問看護ステーションの看護師の違いをお話します。
病院で例えてみましょう。
患者さんが入院する病棟には、直接患者さんと接する部屋担当の看護師、各部屋の看護師と医師を繋げる病棟リーダー、病棟管理を行っている師長がいます。医師は、病棟リーダーから患者さんについての報告を受けたり指示を出したりし、病棟リーダーは部屋担当の看護師に伝え、看護を行っています。これが基本的な入院病棟での役割分担です。
では、在宅医療ではどうでしょうか。
在宅医療では、患者さんのお宅が病室のイメージです。直接患者さんの看護をする部屋担当の看護師が訪問看護ステーションの看護師、医師が行う訪問診療は病室に回診に行くようなイメージです。医師の診察時には、訪問診療クリニックの看護師といきますが、これは回診についてくれる看護師のイメージに近いと思います。
例えば、患者さんの診察・治療をする上で、医師が「診察しましょう」「腹水穿刺しましょう」「7日間点滴をしましょう」と方針を決定したとしましょう。
診察の場合には、バイタルの測定をしたり診察の介助をしたりします。また、腹水穿刺するとなるとエコーの準備・補助から、腹水穿刺キットの準備・穿刺の補助、穿刺している時のバイタル測定などが必要になります。病院の場合、これらを行うのは回診についている看護師です。これが訪問診療クリニックの看護師の役割となります。
7日間点滴をする場合はどうでしょう。
訪問診療では7日間患者さんの自宅で点滴ができるように点滴・ルート物品や酒精綿・針・テープなどを用意し環境を整えるのが訪問診療クリニックの看護師です。点滴を実際に実行するのは、お部屋を担当している訪問看護ステーションの看護師なのです。
訪問診療クリニックの看護師は、住み慣れた環境で患者さんが、安心して、納得して治療を受けられるように環境(医材、人的環境、物理的環境など)を整える役割を担っています。
医学と看護学の橋渡し
医学と看護学という面でも、訪問診療クリニックの看護師と訪問看護ステーションの看護師の違いを考えてみます。医学と看護学では患者さんへのアプローチ方法が異なっているのです。
看護学は「症状」にアプローチします。
「痛い」からどうするか、「腫れてる」からどうするか、症状をいかにとってあげるか、それによってどう生活の質があがるかを考えます。患者さんが「痛い」と訴えていたら、手持ちの解熱剤をどのように使用するか、痛くないようにするにはどのように対処したらよいかを伝えます。また、腫れていれば冷やし、患部を安静にできるように環境を整えます。もし発熱していたら、熱を下げてラクにしてあげたいと看護します。
一方、医学は「病気」にアプローチします。
「痛い」のはなぜか、原因はどこか、原因を突き詰めて原因に対する治療を目指します。発熱している原因をさまざまな方向(感染、アレルギー、免疫など)から考え、根本治療に向けて方針を決めます。
訪問診療クリニックの看護師は、医師が原因を追及して診断し、決めた治療方針に沿った治療が円滑にできるための準備を整えます。そうして、実際に患者さんの苦痛を取ってくれる訪問看護ステーションの看護師が患者さん宅に訪れたときに、スムーズに看護をできる環境をつくります。訪問診療クリニックの看護師は医学と看護学の橋渡しをする重要な役割なのです。
次回は、訪問診療クリニック内での看護師の複数の役割やどのような方が訪問診療クリニックで求められているか、というお話をします。
ホームケアクリニック麻生の井尻学見でした。
当院で働いている看護師についてもっと知りたい方はこちら
<部門紹介インタビュー>看護部門 | ホームケアクリニック麻生