生活を支えるリハビリという考え方
こんにちは、ホームケアクリニック麻生の院長、井尻学見です。
在宅医療において、リハビリはどのような役割を担うのでしょうか。
「できることを増やす」というイメージを持たれることも多いですが、実際の現場では、それだけではありません。
今回は、当院が考える「生活を支えるリハビリ」についてお話します。
「できること」だけではないリハビリ
在宅でのリハビリは、単に身体機能の改善を目指すものではありません。
食事や排泄といった日常動作はもちろん、その人が日々の中で大切にしている行動を、どのように続けていくかが重要になります。
たとえば、
仏壇に水を供える、
決まった時間に外を眺める、
そうした一つひとつの行動も、その人らしさの一部です。
リハビリは、それらを「できるようにする」だけでなく、「続けられるようにする」ための関わりでもあります。
生活の中から見えてくるもの
在宅では、24時間の生活の中で患者さんを捉えることができます。
その中で見えてくるのは、病院では気づきにくい生活上の課題です。
動作そのものだけでなく、環境や習慣、人との関わりなど、さまざまな要素が影響しています。だからこそ、リハビリだけで完結するのではなく、医療や介護と連携しながら関わることが重要になります。
そして在宅では、もう一つ大きな特徴があります。
それは、「環境が人それぞれである」ということです。
整然と片付けられたお宅もあれば、
趣味のものに囲まれているお宅、
植物が多く置かれているお宅、
愛犬や愛猫が自由に走り回っているお宅もあります。
一見すると雑然としているように見える環境でも、
ご本人にとっては長年過ごしてきた「暮らしやすい空間」であることが少なくありません。
ただその一方で、生活の中には常にリスクも潜んでいます。
床に物が散乱していれば転倒の可能性がありますし、在宅酸素療法中の火気は火災のリスクにつながります。また、動物が自由に動き回る環境では、医療行為の安全性や衛生面に配慮が必要になることもあります。
「その人にとっての暮らしやすさ」と、 「医療的な安全性」。
この二つは、必ずしも一致しません。
だからこそ在宅では、環境を一方的に変えるのではなく、その人の生活を尊重しながら、どこまで調整できるかを一緒に考えていく必要があります。
集中的に関わるという選択
必要に応じて、一定期間集中的に介入することで、生活や動作が大きく改善することもあります。
環境を整え、動作を見直し、生活全体を調整していく。そうした関わりによって、日常生活の質が向上していくケースも少なくありません。
ただし、その調整も「正しさ」を押し付けるのではなく、その人の暮らしの中で無理なく続けられる形であることが前提になります。
在宅医療は、整った環境に合わせる医療ではなく、その人の生活に医療を合わせていく営みなのだと感じています。
在宅で回復まで支えるという選択
在宅でのリハビリは、慢性期の生活を支えるだけのものではありません。
実際には、「在宅=維持」というイメージとは異なり、回復そのものを在宅で支えていくケースも少なくありません。
たとえば、手術後に本来であればリハビリ入院を選択する場面でも、「できるだけ早く自宅に戻りたい」と希望される方がいます。そうした場合、自宅で集中的にリハビリを行い、生活の中で回復を目指していくという選択があります。
また、体調の変化をきっかけに一時的に動けなくなった方が、在宅での関わりを通じて再び生活動作を取り戻していくこともあります。
在宅は、「できなくなったことを支える場所」だけではなく、「できるようになる過程を支える場所」でもあります。
その人の生活の中で、その人のペースで回復していく。
そうした選択肢があること自体が、在宅医療の可能性の一つだと感じています。
在宅医療におけるリハビリの役割
在宅医療の中で、リハビリの役割はこれからさらに大きくなっていくと考えています。
入院期間の短縮や在宅療養の継続が求められる中で、「どのように生活するか」に関わる視点は欠かせません。
医療だけで完結するのではなく、生活の中で支えていく。その一端を担う存在として、リハビリの可能性は今後さらに広がっていくのではないでしょうか。
これからも、リハビリを含めた診療のあり方を模索しながら、在宅で提供できる医療の質を高めていきたいと考えています。
ホームケアクリニック麻生の井尻学見でした。
