「一人で訪問しない」チーム医療で支え合う現場
こんにちは、ホームケアクリニック麻生の井尻学見です。
訪問診療というと、「医師が一人で患者さんの家に行って診察する」というイメージを持たれがちですが、当院では原則として一人では訪問しない体制をとっています。そこには、私たちが大切にしているチーム医療の考え方があります。
医療は「記録」も治療の一部
私たちは、単に診察して薬を出すだけが仕事ではありません。診察内容や患者さんの状態を、正確な記録として残すことも大切な医療の一部です。
医師が診療に集中する中、看護師やスタッフが記録をサポートすることで、診療の質と安全性を保つことができます。
たとえば、一人で患者さんの所に訪問して診察や注射をして帰り、翌日、その患者さんの体調が急激に変わっていることをヘルパーさんが発見したとします。医師が一人で訪問し、ご家族や他の人が同席していない場合、訪問診療医が診察、注射をした際に患者さんが普段と変わりなかったと証明する人がいないというリスクもあります。
このような極端な例ではなくても、医師が一人ですべてを対応している場合、患者さんの状況、診察内容、治療内容などの医療の不確実性が高まるのです。
一人で診察・説明・記録まですべて行おうとすると、どこかに無理が生じがちです。特に在宅では、環境が整っていない分、見落としや伝達ミスのリスクが高くなります。だからこそ、なるべく「一人では診ない」という方針が必要だと考えています。
チームで動くことで見えること
看護師が気づいた皮膚の異変
アシスタトが聞いたご家族のちょっとした声
事務スタッフが把握している保険情報
医療ソーシャルワーカーが知っているご家族との関係や介護サービス内容
医師だけでは得られない気づきを、チームで動くことで得られるのが訪問診療の強みです。また、急変時や緊急対応にも、複数人で動ける体制があることで、より迅速で安全な対応が可能になります。
「できる人がやる」ではなく「みんなで支える」
医療は、優れた個人の力だけでは成り立ちません。「一人でできる」ではなく「みんなで支える」ことが、持続可能で安心できる医療につながります。これからも、職種の壁を越えて助け合いながら、患者さんとご家族にとって最善の医療を届けていきたいと思っています。
ホームケアクリニック麻生の井尻学見でした。