がん患者の今に寄り添う訪問リハビリ
こんにちは、ホームケアクリニック麻生の井尻学見です。
今回は、がん患者さんへの訪問リハビリについてお話します。当院では、訪問リハビリ利用者のうち30%以上ががん患者さんで、全国的にも特徴的な割合です。
この背景には、当院が訪問診療で多くのがん患者さんを受け入れていること、そして病状に応じてリハビリを導入していることがあります。
短期間でも効果的な「その時に必要な支援」
がん患者さんの中には、リハビリ導入からわずか30日以内に終了となるケースが約半数に上ります。その大多数が看取りによるものであり、限られた期間での的確な支援が求められます。
変化を見極め、先手を打つ
がんの進行は急速なことも多く、状態の変化に先回りして対応する視点が大切です。関節がかたくなる前に動かし方を工夫したり、寝たきりになる前に褥瘡予防マットを準備したりと、悪化を見越した支援を行っています。
車いすの早期導入や、ケアマネージャーや時には福祉用具業者との連携によって、その人の状態に合った用具を選定することで、最後まで「自分らしい生活」を支えることができます。
「もう動けない」ではなく「今できることを」
がんの進行で「もう動けない」「リハビリは意味がない」と感じる方もいます。しかし、訪問リハビリは「今できること」を少しでも楽に、安全に続けることを目指しています。
身体を大きく動かすのが難しい場合でも、関節のこわばりを防ぐストレッチや、疼痛緩和のためのマッサージなど、状態に応じたケアが可能です。こうした関わりが、呼吸や食事、表情にも良い影響を与えることがあります。
「動けない=何もできない」ではなく、今の身体でどんなケアが心地よいか、どんな支援がその方の生活を少しでも楽にするかを一緒に探っていくことが、訪問リハビリの大切な役割です。
最期まで、その人らしく暮らせるように
がんを抱えながら過ごす在宅での時間は、穏やかであると同時に、日々の小さな変化に左右される繊細なものです。私たちは、短期間であってもその時間が少しでも快適で前向きなものになるよう、リハビリの視点から支え続けています。
治療の過程であっても、終末期であっても、生活の中に「動ける工夫」や「楽な姿勢」があるだけで、その方の表情や日常は確実に変わっていきます。これからも、がんと向き合う方々の声に耳を傾けながら、一人ひとりに寄り添ったリハビリを提供してまいります。
ホームケアクリニック麻生の井尻学見でした。
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